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東京地方裁判所 平成5年(ワ)22013号 判決 1996年8月30日

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

理由

【事実及び理由】

第一  請求

被告は、原告に対し、一億九〇〇〇万円及びこれに対する平成三年八月一一日から支払済みまで年八・五パーセントの割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

本件は、原告が、被告との間で、準消費貸借契約に基づく債務について連帯保証契約が成立した旨主張し、被告に対し、連帯保証債務請求権に基づき、一億九〇〇〇万円及びこれに対する弁済期の後である平成三年八月一一日から支払済みまで約定の年八・五パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

一  原告の主張(請求原因)

1 原告は、訴外趙正衍(以下「趙」という。)との間で、平成二年四月二三日、原告が、趙に対し、訴外三洋工業株式会社(以下「三洋工業」という。)の株式九五〇〇〇株を譲渡する旨の契約を締結し、右同日、右代金にあたる一億九〇〇〇万円を、原告が、趙に対し、次の約定で貸し渡す旨の準消費貸借契約を締結した(以下「本件準消費貸借契約」という。)。

(一) 利息 年八・五パーセント

(二) 弁済期 平成二年一二月三一日

2 被告は、原告に対し、平成二年四月二三日、趙の原告に対する本件準消費貸借契約に基づく債務について連帯保証した(以下「本件連帯保証契約」という。)。

3 よって、原告は、被告に対し、本件連帯保証契約に基づき、一億九〇〇〇万円及びこれに対する弁済期の後である平成三年八月一一日から支払済みまで約定の利率と同率の年八・五パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。

二  争点

1 本件準消費貸借契約の成否。

2 本件連帯保証契約の成否。

(原告の主張)

(一) 趙は、本件準消費貸借契約に先立って、被告に連帯保証人となることを依頼するため、平成二年四月一九日、府中市のさくらグループの本社に被告を訪れた。その場で、趙は、被告に対し、ワコー興業グループの代表者である訴外任益寛(以下「任」という。)から、二億円を借りることとなったことを話し、連帯保証人となることを依頼したところ、被告はこれを承諾した。

(二) 趙は、同月二一日、さくらグループの本社に被告を訪れ、被告に対し、借入金額は一億九〇〇〇万円となったこと、返済期限は同年一二月三一日、金利は年一〇パーセント位であることなどを告げ、持参した借用書二枚(趙と同人の妻丁文蓮の署名、押印以外の金額、金利、契約日、借入先などは記載はない市販の金銭借用証書)に被告の署名、押印を求めたところ、被告はこれを承諾し、借用書二枚に署名、押印して、一枚を趙に交付した。

なお、被告は、趙に対し、この際、借用書の金額、利息、借入先など白地の部分に、返済期限は同年一二月三一日限り、借入金額は一億九〇〇〇万円、利息は一〇パーセント、借入先はワコー興業グループの範囲で記入することを承諾した。

(三) 趙は、同月二三日、右借用書を持参して、任と協議し、金額、金利、貸主を決め、借用書に記載して、完成させた。

(四) 趙は、同日、被告に対し、借用書に記入した金額、利率、貸主を電話で報告したところ、被告はこれを了承した。

(被告の主張)

被告は、趙から、四月二一日、借用書に署名、押印を求められた際及びそれ以前にも、趙は、被告に対し、債権額はいくらか、利息の定めがあるのか、債権者が原告であるのかなどについて何ら説明をしていない。また、被告は、趙から、四月二三日、電話で原告主張の報告を受けたことはない。甲一に被告が署名、押印した時点で、債権者、金額、利息、弁済期及び日付の各欄は全く白地であって、本件連帯保証契約は成立していない。

第三  争点に対する判断

一  争点1(本件準消費貸借契約)について

1 《証拠略》によれば、原告は、趙との間で、平成二年四月二三日、原告が、趙に対し、三洋工業の株式九五〇〇〇株を、一株二〇〇〇円、代金合計一億九〇〇〇万円で譲渡する旨の契約を締結し、同日、右代金にあたる一億九〇〇〇万円を、原告が、趙に対し、貸し渡す旨の本件準消費貸借契約を締結したことを認めることができる。

2 なるほど、有価証券取引税法によれば、有価証券取引税の納税義務者は、有価証券の譲渡をした日の翌日までに、当該有価証券の譲渡につき課されるべき有価証券取引税を政府に納付しなければならない旨(同法一二条一項前段)、また、有価証券取引書に当該納付にかかる領収証書をはり付けておかなければならず、有価証券取引税の納税義務者は、右有価証券取引書を保存しなければならない旨(同法一二条一項後段、三項)それぞれ規定されているところ、本件においては、《証拠略》によれば、三洋工業の株式の譲渡にかかる納付書・領収証書の作成日付は、有価証券取引書に記載された譲渡年月日である同年四月二三日より約一か月後の平成二年五月二九日付けとなっていること、原告提出の有価証券取引には領収証書が添付されていないことが認められるが、右事実をもってしても、右1で認定した事実を覆するに足りないといわざるをえず、他に右1で認定した事実を覆すに足りる証拠はない。

二  争点2(本件連帯保証契約)について

1 《証拠略》によれば、次の事実を認めることができる。

(一) 被告は、昭和二五年、東京都府中市に生まれ、昭和六〇年、訴外株式会社さくらグループ(以下「さくらグループ」という。)の代表取締役に就任した。さくらグループは、被告の父である訴外全演植(以下「演植」という。)及び叔父である訴外全鎮植(以下「鎮植」という。)が創業した、小売業、パチンコ店、レストラン、食品の製造などを営む会社であって、府中市に本社がある。さくらグループは、被告が代表取締役に就任した後も、平成五年に演植が、また平成七年に鎮植が死亡するまで、同人らが実権を掌握していた。

趙は、被告と、東京朝鮮高校及び朝鮮大学校の同級生であり、被告の父演植と趙の父訴外趙南聖(以下「南聖」という。)とが商工会を通じて親交があったこともあって、学生時代は親友として交遊があり、卒業後も交遊は続いた。

趙は、大学卒業後、朝鮮青年同盟に加盟し、副委員長をしていた任と知り合い、後輩、先輩として、親しく付き合うようになった。その後、趙は、滋賀県米原市で南聖の経営するパチンコ店を手伝い、昭和五九年に上京し、メイクアップスクールを開業するかたわら、個人的に株式投資を行ってきた。

任は、昭和二〇年、栃木県に生まれ、昭和五六年、訴外株式会社ワコー興業所(以下「ワコー興業所」という。)の代表取締役に就任した。ワコー興業所を含むワコー興業グループは、任が代表として統括し、アルミスクラップ、飲食業、パチンコ店などを営むものであるが、原告は、ワコー興業グループの一員として、飲食業を営む会社である。

なお、被告と任とは面識はなかった。

(二) 趙は、株式投資を行うについて、その資金の大部分を借入金で賄っていたところ、平成元年秋ころには、損失が約一億円となり、債権者から借入金約九〇〇〇万円の返済を迫られるようになり、右返済の最終期限は、平成二年四月末日となった。そこで、趙は、知人や友人に返済のため借入れを申し込んだが、いずれも断られた。

平成二年三月初旬ころ、趙は、任を訪れ、約九〇〇〇万円の借入金の返済を迫られている旨話して、任に、九〇〇〇万円の借入れを申込み、一度は断られたものの、その後、趙は、数回、任を訪れて、借入れを懇願し、以前、任から、ワコー興業グループで三洋興業の株式を約一〇万株所有していることを聞いていたことから、株式を運用して返済に充てることを考え、右株式を買い取るような形で金員を貸してほしい旨申し入れた。任は、当初、右申し入れを断っていたが、趙は、任に対し、再三、三洋工業の株式を一株二〇〇〇円で買い受ける、売買代金を借りる形にする、返済期限を同年一二月末日とする旨申し出て、結局、任は、同年四月中旬ころ、承諾した。

(三) 右株式は、ワコー興業グループの一員である原告が、平成元年九月ころ、購入した九万五〇〇〇株の株式であり、趙は、任に呼ばれて、ワコー興業グループを訪れ、会社の役員に対し、右借入れについて説明したが、役員は反対し、その場は、ワコー興業グループの代表である任に一任することで収まった。

そして、趙は、任から、会社の他の役員に対しても説明がつかないので、趙の申出を承諾する条件として、趙の妻である訴外丁文蓮(以下「丁」という。)のほか、ネームバリューのある程度ある人を連帯保証人として付けるよう求められ、被告にお願いすれば何とかなるのではないかと考えた。

(四) 平成二年四月一七日夕方ころ、趙は、府中市のさくらグループの本社に、被告を訪れ、二人は、暫く話をした後、近くの小料理屋に行き、食事をしながら話を続けた。そこで、趙は、被告に対し、株式で失敗して約一億円の借金を負い、四月末日までに返済しなければならない状況にある旨話した後、青年同盟時代の知人である任を訪れ、金員を貸してほしい旨申し入れたが、断られた、任が、三洋工業の株式を持っていることを知っていたので、その株式を譲り受けて、それを運用して借金を返したい、三洋工業の株式が年末に二〇〇〇円になれば全てが片づく、任から、会社の役員の目があり、示しのためにも、ネームバリューのある人の名前を借りてこいと言われた旨告げ、保証人として名義を借りたい旨申し入れた。被告は、単純に名義を貸すだけであるならいいと考え、これを承諾した。

趙は、この後、任に対し、電話で、被告の連帯保証が取れそうである旨伝えた。

(五) 同月二一日昼ころ、趙は、府中市のさくらグループの本社に、被告を訪れた。そして、趙は、日本法令の定型書式である金銭借用証書で、本文に、借主として趙の氏名が、連帯保証人として丁の氏名が記載され、末尾の借主欄に趙の住所氏名の署名と押印が、連帯保証人欄に丁の住所氏名の署名と押印があり、その余は不動文字の記載以外は空白であった書面一枚を示し、被告に署名押印を求めた。また、その際、趙は、念書(乙三)を持参し、あくまでも保証人としての名前を借りるだけである旨説明して、被告に交付した。

趙は、被告に対し、右書面の金額欄が空白であることについては、任から譲り受ける三洋工業の株式の株価がいつの時点で決まるのかはっきりしないので分からないと説明したが、あて先欄、返済期日欄、金利欄などが空白であることについては説明をしなかった。被告は、特別の責任が生ずるものではないと考え、趙から示された右金銭借用証書の書面に、求められるまま、本文中の連帯保証人丁の氏名の下に氏名を書き、末尾の連帯保証人欄の丁の署名押印の左側に住所氏名を署名して実印で押印をし、更に、書面の左上側部分に押印をして、これを趙に交付した。

なお、右念書(乙三)には、「このたび、私趙正衍が(株)ワコー興業所(代表取締役--任益寛氏)から総額(空白)円の借入れをおこしたのに際し、連帯保証人になっていただき誠に感謝にたえません。このたびの連帯保証についていえば(株)ワコー興業所からの借用手続き上、必要が生じたあくまで形式上の連帯保証人ということになっています。したがって全尚烈氏には万が一、私と(株)ワコー興業所との間でこの貸借関係上のトラブルが発生しても一切の責任、ご迷惑をおかけしないことを、ここに確約するものです。また、この期間、私個人の身辺上にまったく予測しえない事態が発生した場合は、私の前債務を一方の連帯保証人である丁文蓮の責任において私の両親および兄弟と協議のうえ円満に解決するむね合意していることを合せて付け加えるものです。」との記載がある。

(六) 同月二三日、趙は、ワコー興業グループに、右金銭借用証書の書面を持参して、任を訪れた。その場で、任らが立ち会って、右金銭借用証書の書面の金額欄と金利欄には、ワコー興業グループで財務を担当していた訴外島田信子が、壱億九阡萬円、年利八・五%、壱阡壱百萬円也とそれぞれ記載し、返済期日欄、日付欄及びあて先欄には、趙が、一九九〇年十二月三十一日限り、一九九〇年四月二十三日、サンフーズ株式会社代表取締役新井康義殿とそれぞれ記載して、右書面を完成させた。そして、同日、原告と趙の間で、有価証券取引書及び譲渡契約書を作成した。

なお、任は、趙に対し、被告の印鑑証明書を取得するよう指示したことはなく、また、直接、被告に対し、電話などで、連帯保証の意思を確認したことはなかった。

(七) 趙は、三洋工業の株式を担保にして、金融機関から九〇〇〇万円を借入れ、従前の借入金約九〇〇〇万円の返済に充てた。しかし、趙は、原告に対し、同年五月一日、一一〇〇万円を、同年一二月二六日、一〇〇〇万円を、利息として支払ったものの、株式の運用に失敗し、原告に右金員以外の返済をすることができず、任に、返済期限を平成三年六月末日まで猶予してもらったものの、右期日にも、返済することはできなかった。

この間、趙は、同年五月になって、被告を初めて訪れ、六か月間返済期限を延長してもらったが、任に借入金を返済することができない、この返済期限も期日が迫ってきて、返済を迫られている旨告げ、被告の叔父である鎮植に相談に乗ってくれるよう頼んだ。また、同月一〇日、趙は、被告に対し、金銭借用証書の写しをファックスで送付し、被告は、金銭借用証書に記載された内容について知った。

(八) その後、鎮植を含めて、任、趙及び被告の間で、この問題について協議したものの、決着が付かず、原告は、趙及び被告に対し、本件訴訟を提起するに至った。

これに対し、証人趙の証言中には、(一)小料理屋での話し合いの際、趙は、任から約二億円借りるので連帯保証人になってくれないかと哀願したところ、被告から、決済したら今後株式投資から足を洗うということで連帯保証人となることを承諾した旨、(二)平成二年四月二一日、さくらグループの本社に被告を訪れ、金銭借用証書の書面に署名押印してもらった際、趙は、被告に対し、借りる金額は一億九〇〇〇万円、利息は一〇パーセント、返済期限は同年一二月三一日、あて先は任個人になるのか原告になるのか調整できていないと告げた旨、(三)趙は、金銭借用証書の書面を二枚持参し、被告に二枚とも署名押印してもらった後、一枚は被告に渡した旨、(四)同年四月二三日、金銭借用証書を完成させた後、当日あるいは翌日、趙は、被告に電話をして、金額は一億九〇〇〇万円、年利は八・五パーセント、返済期日は同年一二月三一日という内容となったと報告した旨それぞれ証言する部分があるが、金銭借用証書の書面及び念書(乙三)上は金額は空白となっているにもかかわらず、確定金額などを告げたとすることや二枚作成した金額欄などが空白の金銭借用証書のうち一枚を被告に渡したとすることはそもそも不自然であるといわざるをえないうえ、被告にとって、趙は学生時代の親友ではあるものの、一億九〇〇〇万円という高額で、かつ、株式を運用して決済するという投機性の高い債務の連帯保証をすることまでを短時間で決断する利益は見受けられないこと、乙三には、前記のとおり、「このたび、私趙正衍が(株)ワコー興業所(代表取締役--任益寛氏)から総額(空白)円の借入れをおこしたのに際し、連帯保証人になっていただき誠に感謝にたえません。このたびの連帯保証についていえば(株)ワコー興業所からの借用手続き上、必要が生じたあくまで形式上の連帯保証人ということになっています。したがって全尚烈氏には万が一、私と(株)ワコー興業所との間でこの貸借関係上のトラブルが発生しても一切の責任、ご迷惑をおかけしないことを、ここに確約するものです。」との記載が、また、趙から鎮植に宛てた手紙である乙五の七には、「もちろん任氏がその時、何故ネームバリューの通った保証人を要求したのかという真意はわかりませんが私が任氏からお金を借入れた経緯や書類の作成方法などいろいろ考えても約束不履行後の事までを考えたものではなく、ただ役員の手前、形式を揃えたかっただけの単純なものと私は、今でも信じています。」との記載があること、前掲各証拠によれば、任と被告とは面識がないのに、金銭借用証書を完成するについて、任ら原告の側から、被告に対し、直接、意思確認をしていないことが認められることを総合して判断すると、被告の供述に比べ、前掲の証人趙の各証言部分は不自然かつあいまいであるといわざるをえず、採用することができない。また、証人任の証言中、株式の譲渡についてワコー興業グループで決定するに至った経緯に関する部分及び借用書を作成するにあたって電話で趙に指示をしたとする部分については、証人趙の証言と重要な部分で異なるところがあるほか、前掲乙五の七の記載内容に照らすと、あいまいであって、採用することができないといわざるをえない。そして、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

2 そこで、本件連帯保証契約の成否について検討する。

借入金額欄やあて先欄などは空白であっても、表題部分に金銭借用証書と記載され、借主欄に借主の署名押印がある定型書式の書面の連帯保証人欄に、住所氏名を署名して実印で押印をし、書面の左上側部分に押印をしたというような場合においては、通常は、右書面の交付をもって、ある一定の債務について連帯保証する意思を表示したものと認めるのが相当であると解されるところ、右1で認定した事実によれば、被告は、趙が、任から、三洋工業の株式を譲り受けて、これを運用し、借入金を返済することを考えていたことを知っていたこと、平成二年四月二一日、被告は、趙から、本文に借主として趙の氏名が、連帯保証人として丁の氏名が記載され、末尾の借主欄に趙の住所氏名の署名と押印が、連帯保証人欄に丁の住所氏名の署名と押印があり、その余は不動文字の記載以外は空白であった金銭借用証書と表題のある定型書式の書面を示され、右書面の本文中の連帯保証人欄に氏名を書き、末尾の連帯保証人欄に住所氏名を署名して実印で押印をし、更に、書面の左上側部分に押印をして、これを趙に交付したことが認められるものの、他方、右1で認定した事実によれば、同日、右書面に署名押印を求めるに際して、趙は、被告に対し、右書面に記載されるべき、借入金額、あて先、返済期日、金利などについて説明をしていないこと、趙は、被告に対し、右署名に先立つ、同年四月一七日、任から、会社の役員の目があり、示しのためにも、ネームバリューのある人の名前を借りてこいと言われたので、保証人として名義を借りたい旨告げ、また、趙は、同月二一日、前記のとおりの記載がある念書(乙三)を持参し、被告に、再度、あくまでも保証人としての名前を借りるだけである旨説明したこと、被告は、右説明などから、形式上、単純に名前を貸すだけであり、責任が生ずることはないと考えていたこと、任らは、金額、あて先などを記載し金銭借用証書を完成させた際あるいはその後、直接、被告に対し、何ら意思確認をしていないこと、被告は、趙から、平成三年五月一〇日、金銭借用証書の写しをファックスで送付を受け、右書面に記載された内容について知ったものであることが認められ、右事実に、前記のとおり、被告にとって、趙のために、一億九〇〇〇万円という高額の債務の連帯保証をすることの利益は見受けられないことを勘案すると、本件においては、金銭借用証書の書面に前記のとおり署名押印したことをもってしても、後に右書面に記載された内容の債務について、被告が、原告に対し、連帯保証する意思を表示したとまで認めるに足りないといわざるをえない。

そして、他に、本件連帯保証契約が成立したとする原告の主張を認めるに足りる証拠はないから、争点2についての原告の主張は理由がない。

第四  結論

以上のとおりであって、原告の請求は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担について民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 小池一利)

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